昔話から 鬼婆の話
小学校2年生にむけて。
さんまいのおふだ (こどものとも傑作集) 福音館書店 水沢謙一 作 梶山俊夫 絵
定番の昔話の一つです。
便所の神様に助けてもらう場面と三枚のおふだが障害物を作り出す場面、そしてさいごの鬼婆と和尚さんの問答の場面 それぞれ子どもは引きつけられます。
地方によって、類話がいくつかあるので 知ってるお話とちょっと違うと思うこともあるかもしれません。
「あおいたま あかいたま しろいたま」というのが鬼婆の描写がとてもねっとりと怖いので、子どもの年齢にあわせて本を選ぶとよいかもしれないですね。
くわずにょうぼう 福音館書店 稲田和子 再話 赤羽末吉 絵
こちらも類話がいくつかあります。
ご飯を食べずによく働く女房がほしいとおもった男のところに、きれいな女房が現れてよく働くいい嫁だとおもっていたら、実は大食らいの鬼婆だったという話。
いい女房と男が疑いかける場面、鬼婆とばれて男を連れ去る場面、男が鬼婆から逃げる場面とこちらもはらはらどきどきの展開が飽きずに話をすすめてくれます。
怖いものは怖く、はらはらどきどきしてもきちんと決着がついて、助かる!という展開は子どもの心に安心感と満足感を与えるといわれています。
絵もお話に見合ったものの方が、想像力や雰囲気を壊さずに心に届きます。
絵本を選ぶときに参考にしてみてください。
鬼婆って恐ろしいけど、決して負けてしまうものではなくて、苦手ものがあったりするのもちょっと人間くさいように思います。
鬼婆の話、たくさんありますのでまた、紹介したいと思います。
古典から
多くの人に知られている昔話、いわゆる古典といわれる絵本を紹介します。
三びきのこぶた 瀬田貞二 訳, 山田三郎 絵 福音館書店(こどものとも)
三びきのこぶたの絵本はたくさんありますが、この本をおすすめしたいです。
以前にも書きましたが、絵本にとって絵は字と同じかそれ以上に大切です。
文字の読めない小さな子を対象にしているのですから、小さな子にとってその絵がどうかというのが大事だと思います。
かわいさを強調した絵というのは、あまいケーキと同じで 子どもの成長という点からは相応しくないように思います。
この絵本は動きのある絵、余白との構成がとてもしっかりしていて絵本をめくる方向とお話が進んでいく方向が一緒なのが感じられます。
なによりそのストーリー。みなさんが知っている三びきのこぶたのストーリーはどんなものでしょう?
わらや木でできた家をオオカミに吹き飛ばされるというのは、有名ですが、上の二人のこぶたはオオカミに食べられてしまいます。
さらにその後、オオカミと三番目のこぶたの知恵比べがあって、最後にはオオカミはぐらぐら煮立ったお鍋の中に落ちて、ゆでられて子豚に食べられてしまいます。
結末をいろいろ変えてあるお話も多いのがこの三びきのこぶたのおはなし。有名なればこそなのでしょうが、もともとのイギリスの昔話、原作に忠実なのはこの絵本。
現代の感覚では残酷かなと思う場面も子どもたちはあまり気にしません。
悪者がきちんと罰を受けるというのは、実は子どもの心の成長にとっては大切なことで、中途半端な結論よりは安心感があるそうです。
是非一度、手に取ってみてください。
動きのある絵
今回は絵本の絵の方に目を向けてみたいと思います。
大人はどうしても絵本を読むときに字を読んでしまいます。
字を読まずに、絵だけをめくってみると その絵本の違った魅力に気がつくと思います。
ロングセラーとか古典と言われる絵本では、絵に力強さや動きのあるものが多いように思います。
この絵本、赤毛のアンの訳で知られる、村岡花子さんの訳なんですね。言葉のよく練られた訳も素敵ですが、なんといっても動きのある絵が魅力です。
そこに風が巻き起こっているかのような、空気の動きが感じられる絵です。
ぜひ、一度手にとっていただきたいです。
動きのある絵としては人気の絵本ぐりとぐらのシリーズの中から
中川 李枝子 作 山脇 百合子 絵 福音館書店
ぐりとぐらがうみぼうずにいろいろな泳ぎを教わるシーン。
ここでは思わずからだが動いてしまうような、リズミカルな絵の構成と文章で 人気のページだと思います。
絵本の魅力はさまざまにありますが、絵だけを見ておはなしが楽しめる、絵に動きがあって心がうきうきと動き出す、そんな視点で手にした絵本を見てみるのも楽しいと思います。
動きのある絵本、もっと探してみたいと思います。
始まりの一冊
いよいよ新学期が始まりました。
4月は学校生活になじむための時間なので、読み聞かせはお休みです。
空いている時間を使って、読み聞かせのための絵本選びです。
木島 始 文 佐藤 忠良 画 福音館書店
力強いデッサンが魅力の絵本です。
木の重厚さ、年月を重ねた質感がぐいぐい迫ってくる感じです。
モノクロの絵にだんだん色がついていきます。
線の内側を塗っているのではなくて、空気が染まっていくような色ののせ方です。
この方の描かれた絵本に「おおきなかぶ」があります。
あの重厚な雰囲気がこちらの絵本にも現れていると思います。
深い森の中にいるような気持ちになれる一冊です。
角野 栄子 さく スズキ コージ え のら書店
読み聞かせの絵本の間に入れるのに重宝な一冊。
いろいろななぞなぞがとんちの効いた言葉で出てきます。
「おてんきには ねんねして
くもりには ぐずぐず まよって
あめには いさんで おでかけ」
ここにスズキコージさんの絵がのっているのですから、楽しいのです。
季節にあったもの、おもしろいもの、難しいもの、とりまぜて4つくらいすると子供たちが楽しんでくれます。
パンつながりで
おいしいものが出てくるおはなしは大好きです。
くだものややさい、ホットケーキは定番ですが、今日はパンつながりで。
たな 作 パイ インターナショナル
左側にはおいしそうなパンのアレンジと簡単なレシピ、右側ではいつもおじいちゃんがパンを用意してくれています。
ずっと同じ構図ですが、作ってもらっている男の子は少しずつ変化していきます。
とてもシンプルなのですが、ほっこりと心温まる絵本です。
神沢 利子 作 林 明子 絵 福音館書店
お気に入りの一冊。
いっしょにぱんを作りたくなってしまう絵本です。
林さんの絵がとても素敵で、ぱんのこんがり具合もおいしそうです。
子どもの頃に読んだ絵本が入り口になったこと たくさんあります。
ぱん作りもその一つ。
絵本の通りにはできなくても、ものができることがわくわくして、何度かチャレンジして。
少し大きくなってからは、他の本を参考にもう少し本格的に作ってみたり。
絵本てたくさんの入り口みたいな気がします。
難しくなくて、できそうな気がして、最初の一歩を応援してくれるみたいな。
ことばであれこれと説明している絵本はどちらかというと大人向きな気がします。
子どもにはもっと感覚的な視覚的な絵本を伝えたいなと思います。
パンの
たねまきのおはなし
今回も春の絵本をひとつ。
キャスリン・O. ガルブレイス 作 (のら書店)
絵がとても美しい絵本です。
生物学的に言えば、風媒花、虫媒花、鳥媒花といったおはなしですが、それを易しく美しい絵で魅せてくれます。
自然科学系の絵本は写真のものが多いですが、こんな絵本も ぜひ子供たちに届けたい一冊です。
もう少しファンタジーがはいってくると
たかおゆうこ 作 (講談社)
春を待って、種まきをして、たくさんの実がなるというおはなしです。
はじめの方でクルミの中からいろいろな想像がうまれます。
クルミの殻で小さな針刺しを作ったり、地方によっていろいろな民芸小物が作られています。
そんなふうに話が続くのかと思いきや・・・・・。
春。
いろんなものが芽吹くとき、たくさんの想像と夢も生まれるのかもしれません。